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受け入れ企業の実務

技能実習生が帰国するとき、会社がやること

実習を終えて帰国するとき、受け入れ企業には税金・社会保険・在留カードの返納など、出国の前後でやることがいくつもあります。「いつ・何を・どこへ」を時系列で整理しました。手続きが多いので、出国の1か月前から逆算して動くのが安心です。とくに帰国旅費の負担在留カードの扱い(特定技能で戻る予定があるとき)は要注意です。

まず要点だけ 帰国が決まったら、税金(住民税・所得税)/社会保険・年金(脱退一時金)/在留カードの返納/雇用保険の手続きを、出国の前後に分けて進めます。帰国旅費を実習生本人に負担させることはできません(自己都合でも同じ)。そして特定技能などで戻る予定があるなら、在留カードをうかつに返納しないこと。やることが多いので、出国の約1か月前から逆算して動くと漏れません。

① 帰国旅費は誰が負担する?(本人負担はなぜダメ)

技能実習制度では、帰国旅費は監理団体が負担すると定められています。ただし監理団体は、帰国旅費を監理費(実費に限る)として受け入れ企業から徴収できるため、実務上は受け入れ企業が負担していることがほとんどです。帰国旅費には、実習生が出発する空港までの移動費も含みます。

「自己都合だから本人持ち」はできません いかなる理由でも、帰国旅費を実習生本人に負担させることは認められません。これは本人の自己都合による帰国であっても同じです。
なぜ本人負担にしてはいけないの? →「帰れない」を防ぐため 帰国旅費を本人に負担させると、お金が用意できずに帰国できない実習生が出てしまい、結果として在留期限を過ぎても帰れない=不法残留(オーバーステイ)や失踪につながりやすくなります。確実に帰国できるよう旅費を含めて備える(帰国担保措置)のは、受け入れ側の役割です。
帰れずに不法残留・失踪になったら、責任は受け入れ側に問われる 万一、実習生が帰国できずに不法残留・失踪に至った場合、受け入れ企業・監理団体の責任が問われます。技能実習計画の認定取消しや、1〜5年の新規受け入れ停止、優良認定の取消しといったペナルティの対象になり得ます。「本人が勝手に残った」では済まないため、旅費負担を含む適正な送り出しが大切です。

※ 出典:技能実習制度運用要領(厚生労働省・外国人技能実習機構)。育成就労でも、帰国旅費の本人負担禁止の考え方は引き継がれる見込みです。

② 帰国までのタイムライン(会社・本人がやること)

手続きは「出国前にやること」と「出国当日・出国後にやること」に分かれます。会社がやることと、本人が片づける生活面(会社が案内)の両方があります。下の表でフェーズごとに分けて示します。最終給与で精算するものが多いので、給与の締めから逆算して準備します。

③ 税金の手続き(住民税・所得税)

税金は「住民税(前年の所得にかかる)」と「所得税(その年の所得にかかる)」で手続きが違います。出国してしまうと徴収が難しくなるため、出国前に片づけるのが基本です。

税金会社がやること
住民税残りの住民税を最終給与から一括徴収(1〜5月退職は一括徴収が原則、6〜12月退職は本人の申し出により)。退職の約1か月前までに給与所得者異動届出書を市区町村へ。徴収しきれない分や翌年度分が残るときは納税管理人を選任。
所得税その年の1月1日〜出国日までの所得について出国時の年末調整を行う。または納税管理人を届け出て翌年に確定申告(準確定申告)。賞与などで国内源泉所得が残る場合は20.42%の源泉に注意。
1月1日に日本にいた人は、翌年度の住民税がかかる 住民税は1月1日時点の住所で課税されます。6〜12月に出国しても、その年の1月1日に日本に住所があれば翌年度の住民税が発生します。この分の納付のために納税管理人が必要になることがあります。

※ 出国時の年末調整・国外扶養親族の扶養控除など、所得税のくわしい扱いは 技能実習生の年末調整・税金 で解説しています。

④ 社会保険・年金と脱退一時金の準備

退職にともない、健康保険・厚生年金雇用保険の資格を失います。会社は喪失の届出を、本人は帰国後に脱退一時金の請求をします。脱退一時金は出国前の書類準備が肝心です。

脱退一時金の受け取り準備(出国前にそろえる) 次のものを準備します。
脱退一時金請求書(日本年金機構のサイト・年金事務所で入手)
基礎年金番号がわかるもの(基礎年金番号通知書・年金手帳など)
パスポートの写し(氏名・生年月日・国籍・署名・在留資格のページ)
本人名義の受取口座の情報(銀行名・支店名・口座番号)。日本の口座はカタカナ名義ゆうちょ銀行や一部のネット専業銀行は受取口座に指定できません
納税管理人の届出(請求時に源泉徴収される20.42%の所得税を、退職所得の選択課税で取り戻すため。出国前に届け出ておくと有利)
帰国後、市区町村への転出(除票)を済ませてから、請求書を日本年金機構へ郵送します。

※ 加入する保険の全体像・保険料・脱退一時金の計算例(3年で約66万円など)は 技能実習生の社会保険 で詳しく解説しています。

⑤ 在留カードの返納(※特定技能で戻る予定があるなら要注意)

在留カードの扱いは、「もう日本に戻らないか」「特定技能などで戻る予定があるか」で大きく変わります。ここを間違えると、しばらく日本に戻ってこられなくなることがあるので、いちばん注意が必要なポイントです。

【重要】特定技能などで戻る予定があるなら、うかつに返納しない 技能実習を終えてから特定技能1号として戻る予定がある人などは、在留カードをうっかり返納してしまうと在留資格・在留期間が消滅します。そうなると、また一から在留資格認定証明書(COE)の申請が必要になり、しばらく日本に戻ってこられなくなります。一時帰国するだけなら、下の②の「みなし再入国許可」を使い、在留カードは返納せずに持って出国します。
ケース在留カードの扱い
① もう日本に戻らない
(本帰国)
みなし再入国許可を使わずに出国します。出国審査で在留カードとパスポートを提示し「返納」を申し出ると、その場でカードにパンチ穴を開けて失効させます。無効化されたカードは記念にそのまま返してもらえることが多いです(回収される場合もあります)。
② 特定技能などで戻る予定がある/在留資格を残して一時帰国する在留カードは返納しない。出国時に出国カードの「みなし再入国許可による出国」を希望する欄にチェックし、在留カードを提示して出国します。出国日から1年以内(在留期限が先に来ればその日まで)に再入国すれば、通常の再入国許可は不要です(有効な在留カードを持っていることが前提)。
③ 一時帰国のつもりが、戻らないことになったみなし再入国の期限(出国日から1年・在留期限のいずれか早い日)が切れた日から14日以内に郵送で返納(封筒に「在留カード等返納」と表記し、東京出入国在留管理局おだいば分室あて)。
技能実習 → 特定技能は、一時帰国しなくても移行できる 技能実習から特定技能への移行は、一時帰国しなくても日本国内で在留資格の変更ができます(移行のために帰国する必要はありません)。一時帰国する場合だけ、上の②(みなし再入国)に注意してください。
みなし再入国の「申告忘れ」「期限切れ」に注意 みなし再入国の申告をせずに出国したり、1年(または在留期限)を過ぎて再入国しないと、在留資格が消滅します。こうなると、戻って働くにはまた一から在留資格の申請が必要です。戻る予定があるなら、出国前に在留資格・期限とみなし再入国の手続きを必ず確認しましょう。
会社が在留カード・パスポートを取り上げるのは禁止 返納はあくまで本人が行うものです。会社が在留カードやパスポートを取り上げて保管することは法律で禁止されています(自主点検でも確認される項目です)。会社は案内・サポートにとどめます。

※ 出典:出入国在留管理庁「在留カード等の返納」「みなし再入国許可」。

⑥ 雇用保険・外国人雇用状況の届出

退職時には、ハローワークへの届出があります。雇用保険に入っているかどうかで手続きが少し変わります。

  1. 雇用保険に入っていた人雇用保険被保険者資格喪失届を、退職日の翌日から10日以内にハローワークへ。外国人雇用状況の届出は、この喪失届の備考欄で兼ねられます
  2. 雇用保険に入っていない人外国人雇用状況の届出(離職)を、離職した月の翌月末日までにハローワークへ。届出を怠ると30万円以下の罰金の対象になります。

※ 社会保険・雇用保険の加入や届出の全体像は 技能実習生の社会保険 もあわせてご覧ください。

⑦ 途中で帰国するとき(中途帰国)

実習の途中で帰国することになった場合は、上の手続きに加えて機構への届出が必要です。そして何より、本人の意思の確認が大前提です。

  1. 本人の意思を書面で確認:帰国は本人の意に反して行わせてはいけません。十分に説明したうえで、帰国の意思を書面で確認します。
  2. 機構へ届出:出国前に技能実習実施困難時届出書を、外国人技能実習機構(OTIT)の事務所・支所へ遅滞なく提出します(団体監理型は監理団体の指導に基づき準備します)。
  3. 帰国旅費はこの場合も会社/監理団体が負担:自己都合の中途帰国であっても、実習生本人に帰国旅費を負担させることはできません。

※ 出典:外国人技能実習機構「技能実習実施困難時の届出」。

帰国時にやることチェック

時系列でまとめると、次のようになります。出国日が決まったら、この順で逆算して進めてください。

  1. 1〜2か月前:帰国日・航空券の手配/(中途帰国なら)本人の意思確認+機構へ実施困難時届出/住民税の異動届を市区町村へ/(本人)送金・口座解約・荷物発送・携帯やライフラインの解約手配
  2. 出国前(最終給与まで):住民税の一括徴収/所得税の出国時年末調整または納税管理人の届出/寮・貸与品の精算/健康保険証の回収/(本人)脱退一時金の請求書類をそろえる・転出届
  3. 出国当日(空港):本帰国なら在留カードを空港で返納/戻る予定があるならみなし再入国許可で出国(返納しない)
  4. 出国後:健康保険・厚生年金の資格喪失届(5日以内)/雇用保険の資格喪失届外国人雇用状況の届出(ハローワーク)/(本人)脱退一時金を請求

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