① なぜ失踪が起きるのか(最多の理由は「低賃金」)
失踪と聞くと「本人が勝手に逃げた」と思いがちですが、国の調査を見ると、原因の多くは受け入れ側の労働条件にあります。失踪動機でいちばん多いのは「低賃金」で、約7割を占めます。
※ 出典:法務省「失踪技能実習生の現状」聴取票調査(失踪後に摘発された2,870人・複数回答)。失踪動機は「低賃金」が67.2%で最多。実習先の月給は「10万円以下」が半数以上を占めていました。失踪者数は近年も高水準で、2023年は過去最多の9,753人。多くは受け入れ企業側の労働条件・支援体制を見直すことで予防できる要素です。
② 失踪が起きたら、すぐやること
連絡が取れない・無断で来なくなった、というときは、早く動くほど本人の安全確認にも、会社を守ることにもつながります。次の順で進めます。
- 監理団体に連絡(団体監理型):まず監理団体に報告し、以降の届出を相談しながら進めます。
- 機構(OTIT)へ技能実習実施困難時届出:失踪は「実習の継続が困難になった場合」に当たります。技能実習実施困難時届出書を遅滞なく機構へ提出します(団体監理型は監理団体が中心に手続き)。
- 警察へ行方不明届:事件・事故に巻き込まれている可能性もあるため、所轄の警察署へ行方不明届を出します。
- 入管(地方出入国在留管理局)へ連絡:在留資格にかかわるため、入管にも連絡します。
- 給与精算・退職にともなう手続き:失踪日までの賃金を精算し、健康保険・厚生年金・雇用保険の資格喪失届、外国人雇用状況の届出などを進めます。
③ 届出を怠るとどうなる
失踪時の届出は法律上の義務です。「いなくなったから、もういい」と放置するのは禁物です。
④ 会社へのペナルティ(受け入れ停止・優良減点)
失踪が起きたとき、会社側にその原因(低賃金・長時間労働・不適正な環境など)があったかどうかで、影響の重さが変わります。
| 影響 | 内容 |
|---|---|
| 受け入れの停止 | 会社側に原因(不正・不適正な環境など)がある場合、違反の内容に応じて1年・3年・5年のいずれかの期間、技能実習生を受け入れられなくなることがあります。 |
| 優良要件の減点 | 失踪者を出すと、優良な実習実施者・監理団体の要件で減点。その結果、技能実習3号(最長5年)の受け入れができない、受け入れ人数枠が縮小する、といった不利益につながります。 |
| 計画認定への影響 | 受け入れの管理体制に問題があると判断されると、技能実習計画の認定・更新に影響することがあります。 |
※ 優良要件・人数枠のしくみは 技能実習の人数枠 でも解説しています。
⑤ 失踪を防ぐためにできること
失踪は「起きてから対応」より、「起きないようにする」のが何より大切です。原因の多くが賃金・環境である以上、受け入れ企業の取り組みで予防できます。
- 適正な賃金を払う最低賃金や残業代を必ず守る。日本人と同等以上の報酬にする。「低賃金」を理由とする失踪を防ぐ、いちばんの土台です。
- 働きやすい労働環境長時間労働をさせない、ハラスメントをなくす、安全に配慮する。労働時間の管理を適正に。
- 相談できる体制をつくる生活指導員などが、母国語ややさしい日本語で相談に乗れるように。困りごとを早めに把握し、孤立させないことが効きます。
- 記録を残す勤怠・賃金を正しく記録し、相談の記録も残す。適正な受け入れの証明になり、変化の早期発見にもつながります。
失踪への備えチェック
「起きたとき」と「防ぐため」の両面でまとめます。
- 起きたら急いで届出:監理団体 → 機構(実施困難時届出)→ 警察 → 入管 → 給与精算・資格喪失。遅らせない・隠さない。
- 原因が会社側だと重い:低賃金・不適正な環境が原因なら、1〜5年の受け入れ停止や優良減点も。
- 賃金・労働時間を適正に:最低賃金・残業代を守り、同等以上の報酬に。
- 相談体制と記録:母国語で相談できる体制+勤怠・賃金・相談の記録で、早期に気づける状態に。
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