① 入る保険は4つ
技能実習生も労働者である以上、加入のしくみは日本人と同じです。まずは4つの保険を一覧で。
| 保険 | 何のため | だれが入る | 保険料 | 手続き先・期限 |
|---|---|---|---|---|
| 労災保険 | 仕事中・通勤のケガや病気 | 雇う人全員(1人でも) | 全額 会社 | 事業所が労働保険に加入していれば、実習生ごとの届出は不要 |
| 雇用保険 | 失業・育児休業などの給付 | 週20時間以上・31日以上雇う見込み(通常は対象) | 会社と本人 | ハローワーク/雇入れ日の翌月10日まで |
| 健康保険 | 病気・ケガの医療費(3割負担) | 適用事業所で常時使用(国籍・賃金問わず) | 労使 折半 | 年金事務所(協会けんぽ等)/資格取得日から5日以内 |
| 厚生年金 | 老齢・障害・遺族の年金 | 同上 | 労使 折半 | 年金事務所/資格取得日から5日以内 |
② Aさんの場合、毎月いくら?
モデルケース:Aさん(22歳の技能実習生)/月給20万円(標準報酬月額20万円)/製造業の会社/協会けんぽ(全国平均の料率・2025年度)で計算。
| 保険 | 料率(本人分) | 本人(毎月) | 会社(毎月) |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 5.00% | 10,000円 | 10,000円 |
| 厚生年金 | 9.15% | 18,300円 | 18,300円 |
| 雇用保険 | 0.55% | 1,100円 | 1,800円 |
| 労災保険 | - | 0円 | 約900円 |
| 合計 | - | 約29,400円 | 約31,000円 |
※Aさんは40歳未満なので介護保険料(40〜64歳・1.59%)はかかりません。健康保険料率は都道府県、労災保険料率は業種で変わります。標準報酬月額や端数処理で実額は多少前後します(2025年度・協会けんぽの例)。
つまりAさんの手取りは、月給20万円から本人負担の社会保険料 約29,400円(+所得税・住民税)を引いた額になります。会社は給与とは別に、ほぼ同額の約31,000円を負担します。本人負担分は毎月の給与から控除(天引き)して会社が納付します(日本人と同じしくみ)。手取りの考え方は最低賃金・手取りの記事もあわせてご確認ください。
③ 講習中と実習開始後で変わる
入国してから帰国までで、入る保険は次のように切り替わります。
- STEP 1 ── 入国後講習中(雇用の前)国民健康保険など講習中はまだ雇用関係がないため、健康保険・厚生年金・雇用保険には入りません。住所登録のあと国民健康保険(20歳以上は国民年金)に加入します。あわせて民間の傷害・医療保険(外国人技能実習生総合保険など)に入るのが一般的です。
- STEP 2 ── 実習開始(雇用契約を結ぶ)健康保険・厚生年金・雇用保険に切替講習が終わり実習が始まると雇用契約を結びます。ここで健康保険・厚生年金・雇用保険に加入。仕事中・通勤のケガは会社の労災保険でカバーされます。
- STEP 3 ── 実習修了・帰国資格喪失の手続き+脱退一時金退職(帰国)にあわせて資格喪失の届出を行い、本人は帰国後に脱退一時金を請求できます(⑤・⑥)。
④ 手続きと期限(いつ・どこに・何を)
実習開始(雇用)したら、それぞれ期限内に届け出ます。
- 健康保険・厚生年金:資格取得日(実習配属日)から5日以内に、年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」。
- 雇用保険:雇入れ日の翌月10日までに、ハローワークへ「雇用保険 被保険者資格取得届」。
- 外国人雇用状況の届出:氏名・在留資格・在留期限・国籍などをハローワークへ。雇用保険に入る人は資格取得届の備考欄に書けば兼ねられます(別途の届出は不要)。雇用保険に入らない人は翌月末日まで。
⑤ 帰国するとき(資格喪失の届出)
退職(帰国)にあわせて、会社は次の手続きをします。
- 資格喪失届:退職(帰国)日の翌日から5日以内に、年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」(健康保険証を添付)。
- 雇用保険:離職の届出(資格喪失届・離職証明書)をハローワークへ。外国人雇用状況の離職の届出も忘れずに。
そのうえで、納めた厚生年金の一部が本人に戻る脱退一時金を案内します(次の⑥)。
⑥ 脱退一時金(いくら戻る・受け取り方・税金の還付)
脱退一時金は、帰国する外国人が納めた厚生年金保険料の一部を受け取れる制度です。技能実習生にとって関心の高いお金で、会社・監理団体のサポートが喜ばれるところです。本人が帰国後に請求します。
もらえる条件(次のすべて)
- 日本国籍を有しない。
- 厚生年金(または国民年金)に6か月以上加入していた。
- 老齢年金の受給資格期間(原則10年)を満たしていない。
- 障害年金など、年金を受ける権利を持ったことがない。
- 日本に住所がない(住民票を抜いている)。※請求書が受理される日に日本に住所があると受け取れません。
請求の期限は、日本に住所を有しなくなった日(出国)から2年以内です。
いくら戻る?(計算例)
厚生年金の脱退一時金は 「平均標準報酬額 × 支給率」。支給率は 18.3%(=0.183)× 1/2 × 加入月数に応じた数で、上限は60か月(5年)です(2021年4月から36か月→60か月に拡大)。標準報酬月額20万円のAさんなら、目安は次のとおりです。
①支給率 = 0.183 × 1/2 × 36 = 3.3
②脱退一時金 = 20万円 × 3.3 = 約660,000円
①支給率 = 0.183 × 1/2 × 60 = 5.5
②脱退一時金 = 20万円 × 5.5 = 約1,098,000円
※実際は平均標準報酬額や賞与、最終月の属する年の保険料率で計算します。上は分かりやすくした概算です。
受け取りの流れ(帰国前 → 帰国後 → 振込)
- STEP 1 ── 帰国する前に(日本で)住民票を抜く+受取口座を準備転出届を出して住民票を抜きます(「日本に住所がない」状態にする)。あわせて受取口座を準備(下の注意を参照)。税金の還付を受けるなら、帰国前に「納税管理人」を税務署へ届け出ておきます。
- STEP 2 ── 帰国後(母国から)請求書を日本年金機構へ郵送脱退一時金請求書に必要書類を添えて、日本年金機構(〒168-8505 東京都杉並区高井戸西3-5-24)へ郵送します。
- STEP 3 ── 振込不備がなければ約4か月で入金書類に不備がなければ、請求からおおむね4か月で本人の口座に振り込まれ、「脱退一時金支給決定通知書」が届きます。海外口座への送金は現地通貨に換算して支払われます。
・母国の本人名義の口座(海外送金。SWIFT/BICコードなどが必要で、現地通貨に換算して振り込まれます)
・日本国内の本人名義の口座(口座名義がカタカナで登録されていること)
★ゆうちょ銀行と一部のインターネット専業銀行は、脱退一時金の受取口座に指定できません。帰国時に日本の口座は解約することが多いため、実際には母国の口座への海外送金が中心になります。請求書には「銀行の証明」または通帳の写しなどが必要です。
必要書類
- 脱退一時金請求書
- パスポートの写し(氏名・生年月日・国籍・署名・在留資格のページ)
- 「日本に住所がない」ことの確認書類(住民票の除票の写し、または出国日が分かるパスポートの写しなど。帰国前に転出届を出していれば不要な場合があります)
- 基礎年金番号がわかるもの(基礎年金番号通知書・年金手帳など)
- 受取口座の確認書類(銀行の証明、または通帳の写し。海外送金はSWIFT等の記載があるもの/ゆうちょ銀行・一部ネット銀行は不可)
税金(源泉)と還付 ── ここが大事
また、入国後講習中などの国民年金(第1号)の期間があれば、別に定額の脱退一時金があります(こちらは源泉徴収されません)。
振込が遅い・分からないときの問い合わせ先
請求から4か月以上たっても振り込まれない、手続きが分からないといったときは、「ねんきんダイヤル」へ。日本国内 0570-05-1165/海外から +81-3-6700-1165(受付:月曜8:30〜19:00、火〜金8:30〜17:15、第2土曜9:30〜16:00)。基礎年金番号がわかるものを手元に用意します。
受け入れ企業がやること(チェック)
- 実習開始(雇用)したら期限内に届出。健保・厚年は5日以内に年金事務所、雇用保険は翌月10日までにハローワーク。
- 外国人雇用状況の届出を忘れない(怠ると30万円以下の罰金)。雇用保険に入る人は資格取得届の備考で兼用できる。
- 保険料の本人負担分を毎月の給与から正しく控除して納付(月給20万円なら本人約2.9万円・会社約3.1万円が目安)。40歳未満は介護保険料なし。
- 帰国時は資格喪失届(5日以内)。本人へ脱退一時金(2年以内・上限60か月)と受取口座の準備を案内する。
- 脱退一時金の税金の還付を案内。帰国前に納税管理人を届け出ておくと、源泉された20.42%の多くを取り戻せる。
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※社会保険・労働保険の取扱いや料率は法令改正で変わることがあります。最新・正確な内容は、日本年金機構・ハローワーク(厚生労働省)・税務署・外国人技能実習機構(OTIT)や、所属する監理団体・社会保険労務士・税理士にご確認ください。本記事は受け入れ実務の一般的な解説です。