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受け入れ企業の実務

技能実習生の社会保険、どれに入る?いくら引かれる?

技能実習生も日本人と同じく社会保険・労働保険の対象です。入る保険は4つ。月給20万円のモデルケースで本人と会社の負担額・手続きの期限・帰国時の脱退一時金(いくら戻る・税金の還付)まで、受け入れ企業の目線で早わかりに。

まず要点だけ 技能実習生も日本人と同じく社会保険・労働保険の対象(国籍・賃金は関係なし)。入るのは労災・雇用保険・健康保険・厚生年金の4つ。月給20万円なら本人負担は毎月およそ3万円、会社もほぼ同額を負担します。帰国時には納めた厚生年金の一部が戻る脱退一時金があり、税金(源泉)の還付も受けられます。

① 入る保険は4つ

技能実習生も労働者である以上、加入のしくみは日本人と同じです。まずは4つの保険を一覧で。

保険何のためだれが入る保険料手続き先・期限
労災保険仕事中・通勤のケガや病気雇う人全員(1人でも)全額
会社
事業所が労働保険に加入していれば、実習生ごとの届出は不要
雇用保険失業・育児休業などの給付週20時間以上・31日以上雇う見込み(通常は対象)会社と本人ハローワーク/雇入れ日の翌月10日まで
健康保険病気・ケガの医療費(3割負担)適用事業所で常時使用(国籍・賃金問わず)労使
折半
年金事務所(協会けんぽ等)/資格取得日から5日以内
厚生年金老齢・障害・遺族の年金同上労使
折半
年金事務所/資格取得日から5日以内
「適用事業所」かどうかに注意法人や常時5人以上の事業所は、健康保険・厚生年金の適用事業所になります。ただし農林水産業など一部業種の個人事業所は適用にならないことがあり、その場合は実習生も国民健康保険・国民年金になります。自社が適用事業所か不安なときは年金事務所に確認を。

② Aさんの場合、毎月いくら?

モデルケース:Aさん(22歳の技能実習生)/月給20万円(標準報酬月額20万円)/製造業の会社/協会けんぽ(全国平均の料率・2025年度)で計算。

保険料率(本人分)本人(毎月)会社(毎月)
健康保険5.00%10,000円10,000円
厚生年金9.15%18,300円18,300円
雇用保険0.55%1,100円1,800円
労災保険0円約900円
合計約29,400円約31,000円

※Aさんは40歳未満なので介護保険料(40〜64歳・1.59%)はかかりません。健康保険料率は都道府県、労災保険料率は業種で変わります。標準報酬月額や端数処理で実額は多少前後します(2025年度・協会けんぽの例)。

つまりAさんの手取りは、月給20万円から本人負担の社会保険料 約29,400円(+所得税・住民税)を引いた額になります。会社は給与とは別に、ほぼ同額の約31,000円を負担します。本人負担分は毎月の給与から控除(天引き)して会社が納付します(日本人と同じしくみ)。手取りの考え方は最低賃金・手取りの記事もあわせてご確認ください。

③ 講習中と実習開始後で変わる

入国してから帰国までで、入る保険は次のように切り替わります。

  1. STEP 1 ── 入国後講習中(雇用の前)国民健康保険など講習中はまだ雇用関係がないため、健康保険・厚生年金・雇用保険には入りません。住所登録のあと国民健康保険(20歳以上は国民年金)に加入します。あわせて民間の傷害・医療保険(外国人技能実習生総合保険など)に入るのが一般的です。
  2. STEP 2 ── 実習開始(雇用契約を結ぶ)健康保険・厚生年金・雇用保険に切替講習が終わり実習が始まると雇用契約を結びます。ここで健康保険・厚生年金・雇用保険に加入。仕事中・通勤のケガは会社の労災保険でカバーされます。
  3. STEP 3 ── 実習修了・帰国資格喪失の手続き+脱退一時金退職(帰国)にあわせて資格喪失の届出を行い、本人は帰国後に脱退一時金を請求できます(⑤・⑥)。

④ 手続きと期限(いつ・どこに・何を)

実習開始(雇用)したら、それぞれ期限内に届け出ます。

外国人雇用状況の届出を忘れると30万円以下の罰金これはすべての事業主の義務です。届出を怠ったり虚偽の申請をすると、30万円以下の罰金が科されることがあります。雇入れだけでなく離職のときも届け出ます。

⑤ 帰国するとき(資格喪失の届出)

退職(帰国)にあわせて、会社は次の手続きをします。

そのうえで、納めた厚生年金の一部が本人に戻る脱退一時金を案内します(次の⑥)。

⑥ 脱退一時金(いくら戻る・受け取り方・税金の還付)

脱退一時金は、帰国する外国人が納めた厚生年金保険料の一部を受け取れる制度です。技能実習生にとって関心の高いお金で、会社・監理団体のサポートが喜ばれるところです。本人が帰国後に請求します。

もらえる条件(次のすべて)

請求の期限は、日本に住所を有しなくなった日(出国)から2年以内です。

「完全に帰国」が前提再入国許可を受けて一時的に出国しているだけ(また日本に戻る予定)では請求できません。住民票を抜いて完全に帰国することが前提です。

いくら戻る?(計算例)

厚生年金の脱退一時金は 「平均標準報酬額 × 支給率」。支給率は 18.3%(=0.183)× 1/2 × 加入月数に応じた数で、上限は60か月(5年)です(2021年4月から36か月→60か月に拡大)。標準報酬月額20万円のAさんなら、目安は次のとおりです。

技能実習3年(36か月)
約 66万円

①支給率 = 0.183 × 1/2 × 36 = 3.3
②脱退一時金 = 20万円 × 3.3 = 約660,000円

技能実習5年(60か月・上限)
約 110万円

①支給率 = 0.183 × 1/2 × 60 = 5.5
②脱退一時金 = 20万円 × 5.5 = 約1,098,000円

※実際は平均標準報酬額や賞与、最終月の属する年の保険料率で計算します。上は分かりやすくした概算です。

受け取りの流れ(帰国前 → 帰国後 → 振込)

  1. STEP 1 ── 帰国する前に(日本で)住民票を抜く+受取口座を準備転出届を出して住民票を抜きます(「日本に住所がない」状態にする)。あわせて受取口座を準備(下の注意を参照)。税金の還付を受けるなら、帰国前に「納税管理人」を税務署へ届け出ておきます。
  2. STEP 2 ── 帰国後(母国から)請求書を日本年金機構へ郵送脱退一時金請求書に必要書類を添えて、日本年金機構(〒168-8505 東京都杉並区高井戸西3-5-24)へ郵送します。
  3. STEP 3 ── 振込不備がなければ約4か月で入金書類に不備がなければ、請求からおおむね4か月で本人の口座に振り込まれ、「脱退一時金支給決定通知書」が届きます。海外口座への送金は現地通貨に換算して支払われます。
受取口座は帰国前に準備を(ここが要注意)受取口座は必ず本人名義です。次のいずれかを準備します。
母国の本人名義の口座(海外送金。SWIFT/BICコードなどが必要で、現地通貨に換算して振り込まれます)
日本国内の本人名義の口座(口座名義がカタカナで登録されていること)
ゆうちょ銀行と一部のインターネット専業銀行は、脱退一時金の受取口座に指定できません。帰国時に日本の口座は解約することが多いため、実際には母国の口座への海外送金が中心になります。請求書には「銀行の証明」または通帳の写しなどが必要です。

必要書類

税金(源泉)と還付 ── ここが大事

20.42%が引かれるが、取り戻せる厚生年金の脱退一時金には、支払時に20.42%の所得税が源泉徴収されます(66万円なら約13万円)。ただし、帰国前に「納税管理人」(日本に住所のある人=会社や監理団体の担当者などでOK)を税務署へ届け出ておけば、その人が還付申告(退職所得の選択課税)を行うことで、源泉された税の多く(ケースにより全額)が戻ることが多いです。請求は受給した年の翌年以降5年以内。

また、入国後講習中などの国民年金(第1号)の期間があれば、別に定額の脱退一時金があります(こちらは源泉徴収されません)。

振込が遅い・分からないときの問い合わせ先

請求から4か月以上たっても振り込まれない、手続きが分からないといったときは、「ねんきんダイヤル」へ。日本国内 0570-05-1165/海外から +81-3-6700-1165(受付:月曜8:30〜19:00、火〜金8:30〜17:15、第2土曜9:30〜16:00)。基礎年金番号がわかるものを手元に用意します。

受け入れ企業がやること(チェック)

  1. 実習開始(雇用)したら期限内に届出。健保・厚年は5日以内に年金事務所、雇用保険は翌月10日までにハローワーク。
  2. 外国人雇用状況の届出を忘れない(怠ると30万円以下の罰金)。雇用保険に入る人は資格取得届の備考で兼用できる。
  3. 保険料の本人負担分を毎月の給与から正しく控除して納付(月給20万円なら本人約2.9万円・会社約3.1万円が目安)。40歳未満は介護保険料なし。
  4. 帰国時は資格喪失届(5日以内)。本人へ脱退一時金(2年以内・上限60か月)と受取口座の準備を案内する。
  5. 脱退一時金の税金の還付を案内。帰国前に納税管理人を届け出ておくと、源泉された20.42%の多くを取り戻せる。

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※社会保険・労働保険の取扱いや料率は法令改正で変わることがあります。最新・正確な内容は、日本年金機構・ハローワーク(厚生労働省)・税務署・外国人技能実習機構(OTIT)や、所属する監理団体・社会保険労務士・税理士にご確認ください。本記事は受け入れ実務の一般的な解説です。