① 仕事中・通勤のケガや病気は「労災」
労災保険は国籍を問わず、雇われて働く人すべてが対象です(技能実習生も同じ)。保険料は全額会社が負担。仕事中(業務災害)や通勤中(通勤災害)のケガ・病気は、本人負担なしで治療を受けられ、休んだ期間の収入も補償されます。
② ケガをしたら、どうする(手順)
- STEP 1 ── すぐ手当・受診「仕事中(通勤中)のケガです」と病院に伝える手当てと受診を最優先に。病院では労災であることを伝え、健康保険証は使いません。労災指定病院なら、原則窓口での支払いなしで治療を受けられます。
- STEP 2 ── 労災保険を請求(様式は③)治療費と休業を請求労働基準監督署へ請求書を提出。療養(補償)給付=治療費が全額、休んで給与が出なければ休業(補償)給付=4日目から約8割。会社は事業主証明欄の記入などで手伝います。
- STEP 3 ── 報告する(④)労基署と機構へ報告会社は労働者死傷病報告を労基署へ。あわせて外国人技能実習機構へ事故報告を行います(⑤)。
一方、造船・食品加工などの製造業や、業務委託・構内下請ではこの一括はありません。ケガをした人を雇っている会社(自社)の労災で処理します(発注元の労災ではありません)。※安全衛生法では造船業も建設業と同じ「特定元方事業者」として元方に安全管理の責任がありますが、これは労災保険を誰が使うかとは別の話です。
③ 手続きは「内容」で様式が違う
労災の請求は、ケガの内容や治療先によって使う様式が変わります。主なものは次のとおりです。
| こんなとき | 使う様式(業務災害) |
|---|---|
| 労災指定病院で治療 | 様式第5号(通勤は16号の3)→ 病院へ提出。窓口負担なし |
| 指定外の病院で立替払い | 様式第7号(通勤は16号の5)→ 払った治療費を請求 |
| 休んで給与が出ない | 様式第8号(通勤は16号の6)→ 賃金台帳・出勤簿・医師の証明を添付 |
| 後遺障害が残った | 様式第10号(障害補償給付) |
| 亡くなった | 様式第12号(遺族補償給付)・葬祭料 |
※療養(補償)給付=治療費は全額。休業(補償)給付=待期3日のあと4日目から、給付基礎日額の60%+特別支給金20%=約8割。最初の3日(待期)は、業務災害なら会社が休業補償(平均賃金の6割)。通勤災害も労災の対象です。
④ 休業補償はどこに振り込まれる?(支給までの救済)
休業補償給付の振込先は、原則として本人の個人口座です(会社ではありません)。請求書(様式第8号)に本人の口座を書き、労働基準監督署(国)から本人へ直接振り込まれます。
- 支給まで通常1か月ほど。しかも1か月ごとの後払いで請求します(休業が続く間、毎月)。
- 最初の3日(待期)は労災給付なし。業務災害なら、この3日分は会社が平均賃金の6割を休業補償します。
⑤ 休業日数で「報告の重さ」が変わる
労災が起きたら、会社は労働者死傷病報告を労働基準監督署へ提出します。休んだ日数で、報告の様式とタイミングが大きく変わります。
| 休業日数 | 会社の対応 |
|---|---|
| 休業0日 (不休災害) | 治療のみ。労働者死傷病報告は原則不要(社内の記録は残す)。 |
| 休業1〜3日 | 様式24号を四半期ごとにまとめて提出。会社は待期3日分の休業補償(平均賃金の6割)。 |
| 休業4日以上 (・死亡) | 様式23号を遅滞なく提出+休業補償給付(4日目から約8割)。監督署の関与が強まり、重大なら災害調査・是正勧告・送検も。 |
※2025年1月から、労働者死傷病報告は電子申請が義務化されました。あわせて外国人技能実習機構(OTIT)へも事故報告を行い、監理団体とも連携します。
⑥ もし亡くなったとき(死亡災害)
万が一の死亡は、手続きが多く重くなります。労災の給付に加え、社会保険の手続き、機構・入管への届出、ご遺体の搬送やご遺族・大使館への対応まで必要で、雇用主である受入企業の役割は大きく、すべてを監理団体任せにはできません。
労災(業務上・通勤)の給付
- 遺族(補償)給付:生計を維持していた遺族がいれば遺族(補償)年金、いなければ遺族(補償)一時金(給付基礎日額の1,000日分)。様式第12号(年金)/第15号(一時金)。
- 葬祭料:31万5,000円+給付基礎日額30日分(または給付基礎日額60日分のいずれか高い方)。様式第16号。
- 労働者死傷病報告(様式23号)を遅滞なく労基署へ。
会社がやること(監理団体任せにできない)
- 健康保険・厚生年金・雇用保険の資格喪失届(死亡日の翌日から5日以内)。
- 外国人技能実習機構(OTIT)へ「技能実習実施困難時届出書」+事故報告。入管・住民票などの手続き。
- ご遺族(母国)・在日大使館への連絡、ご遺体の搬送手配(費用は高額になりがち)、民間の総合保険(外国人技能実習生総合保険など)の死亡保険金請求。
- 監理団体・送出機関と連携しますが、労災請求の事業主証明や社会保険の手続きは雇用主=会社の役割です。
⑦ 「労災隠し」と責任者の書類送検
労災対応は「請求して終わり」ではありません。様式の作成、元請との調整、監督署への報告・対応、再発防止——責任者の負担は小さくありません。だからこそ、起きたときに慌てないよう、流れと様式を先に押さえておくことが大切です。
⑧ 仕事以外のケガ・病気は健康保険
仕事と関係のないケガ・病気(私生活でのケガ、風邪など)は健康保険で受診します(医療費3割負担)。連続して3日休み給与が出ないときは、4日目から健康保険の傷病手当金(標準報酬日額の約3分の2)が、通算1年6か月まで支給されます。健康保険のしくみは社会保険の記事もご覧ください。
受け入れ企業がやること(チェック)
- 仕事中・通勤のケガは必ず労災。病院に「労災」と伝え、健康保険証は使わせない。
- 建設業(建設の事業)は元請の労災。まず元請へ連絡し、元請の労働保険番号・事業主証明で請求。造船・製造業・業務委託は自社(雇用主)の労災。
- 内容に合った様式で請求(療養=5号/7号・休業=8号など)。賃金台帳・出勤簿・医師証明をそろえる。
- 休業補償は本人口座へ・支給まで約1か月。生活が止まらないよう、必要なら受任者払制度(会社が立て替え)で本人を救済する。
- 休業4日以上は様式23号を遅滞なく、1〜3日は様式24号を四半期ごとに労基署へ(電子申請)+機構へ事故報告。
- 労災隠しは絶対にしない(罰金・書類送検・指名停止のリスク)。仕事以外のケガ・病気は健康保険+傷病手当金。
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※労災保険・報告の取扱いや様式は法令改正で変わることがあります。最新・正確な内容は、厚生労働省・労働基準監督署・外国人技能実習機構(OTIT)や、所属する監理団体・社会保険労務士にご確認ください。本記事は受け入れ実務の一般的な解説です。