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受け入れ企業の実務

技能実習生は転籍(転職)できる?育成就労で何が変わる

技能実習は「原則 転籍できない」制度ですが、やむを得ない事情があれば例外があります。そして2027年からの育成就労では、一定の条件を満たせば本人都合の転籍が認められます。受け入れ企業の目線で、いまのルールと変更点を早わかりに整理しました。

まず要点だけ 技能実習は原則として転籍(転職)できません。例外は「やむを得ない事情」(倒産・人権侵害・重大な法令違反など)があるときだけです。2027年からの育成就労では、同じ分野で・一定期間働き・技能と日本語の試験に合格すれば、本人都合の転籍が認められます。受け入れ企業は「育てた人材が移ることもある」前提での定着対策が必要になります。

① 技能実習は「原則 転籍できない」

技能実習は、技能実習計画にもとづいて同じ受け入れ企業で実習を続けるのが原則です。本人の都合(給料が高い会社に移りたい等)での転職はできません。これは「技能の習得」という制度の目的があるためです。

ただし、本人に責任のない事情で実習の継続が難しくなったときは、次の「やむを得ない事情による転籍」で実習先を変えられます。

② やむを得ない事情なら転籍できる

自分(実習生)の責めによらない事情で実習が続けられないときは、転籍が認められます。次のような場合です。

やむを得ない事情の例
受け入れ企業の経営上・事業上の都合(倒産・廃業・事業縮小など)
技能実習の認定の取消し
暴行・各種ハラスメントなどの人権侵害(暴言・脅迫・強要・セクハラ・マタハラ・パワハラなど)
重大・悪質な法令違反、契約違反(賃金の不払いなど)
手続きと支援 やむを得ない事情の転籍は、外国人技能実習機構(OTIT)が転籍先の確保を支援します。転籍の手続き中で実習ができない間は、生活を維持するため週28時間以内の就労を認める措置があります。2024年11月の運用要領改正で、対象となる事情が明確化され、運用が改善されました(出典:出入国在留管理庁・OTIT)。

※ 逆に言えば、ハラスメントや賃金不払いなどがあると「やむを得ない事情」として転籍の対象になります。適正な受け入れが、結果的に人材の定着にもつながります。

③ 育成就労では本人都合の転籍が条件付きで可能に(2027〜)

技能実習に代わって2027年4月に始まる育成就労では、技能実習では原則できなかった本人都合の転籍が、一定の条件のもとで認められます。これが両制度の最大の違いの一つです。

本人都合で転籍するには、次の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 同じ業務区分の中で移ること:原則として、いま働いている分野と同じ業務区分内に限られます。
  2. 同じ会社で必要な期間 働いたこと:在籍期間が分野ごとに「1年」または「2年」と決められていて(下の表)、その期間を超えていることが必要です。
  3. 技能と日本語の試験に合格していること:技能(技能検定基礎級など)と日本語(A1〜A2相当=日本語能力試験のN5〜N4程度)の試験に合格していることが必要です。
  4. 育成就労の期間が延長されすぎていないこと:育成就労の期間が3年を超えて延長されている人は対象外です。

同じ会社での在籍がどれくらい必要か(転籍まで)は、分野によって1年と2年に分かれます。

必要な在籍期間分野
2年多くの分野(介護・建設・製造業 など)
1年宿泊/ビルクリーニング/リネンサプライ/鉄道/物流・倉庫/農業/漁業/林業/木材産業(人手不足が特に深刻な分野)

※ 期間は分野ごとに1年または2年で設定。2026年に方針が示され、2027年4月の施行に向けて政省令で確定します。最新は出入国在留管理庁・厚生労働省の情報をご確認ください。

受け入れ側にも「人数の上限」がある 本人都合の転籍を受け入れる側にも制限があります。本人意向で転籍してきた人は、その受け入れ機関の育成就労外国人の総数の3分の1以内とされています。なお、①②のやむを得ない事情による転籍は引き続き可能です。

これなら転籍OK/これはNG(本人都合の場合の例)

✅ これなら転籍できる
  • 同じ会社で必要な期間(多くの分野は2年・一部は1年)以上働いた
  • 技能(基礎級など)と日本語(N5〜N4程度)の試験に合格している
  • 移る先が同じ業務区分(例:食品製造 → 別の食品工場)
  • 受け入れ先の本人都合転籍が1/3以内に収まっている
✕ これはできない
  • 入社してまだ半年で「給料の高い会社へ」(必要な期間を満たさない)
  • 技能・日本語の試験が未合格
  • 違う分野へ移りたい(例:食品製造 → 建設)
  • 受け入れ先がすでに1/3の枠が埋まっている

※ これは本人都合の転籍の例です。倒産やハラスメントなどのやむを得ない事情がある場合は、上の条件を満たさなくても転籍できます(②参照)。

※ 育成就労は2027年4月施行予定で、就労期間など分野ごとの詳細は政省令で順次具体化されます。最新の内容は出入国在留管理庁・厚生労働省の情報をご確認ください。育成就労の準備は 育成就労の準備 も参考にしてください。

④ 賃金で都会に勝てない…地方企業はどう選ばれ続ける?

育成就労で転籍が解禁されると、最低賃金の高い都市部へ人材が流れやすくなります(例:東京は時給1,200円台、地方は1,000円前後)。地方企業が時給で真っ向勝負するのは簡単ではありません。でも、選ばれ続ける会社になるための「賃金以外の価値」があります。

「額面の時給」より「手取り・暮らし・将来」で差をつける都市部は家賃・物価が高く、手元に残るお金(手取り・貯金額)では地方が勝てることもあります。実習生が本当に気にするのは「いくら貯まるか」「働きやすいか」「この先どうなるか」。ここに地方の勝ち筋があります。
  1. 手取り・貯金で見せる:家賃や生活費が安いぶん、額面が同じでも貯金できる額は地方が多いことも。「時給◯円」ではなく毎月いくら手元に残り・貯金できるかを具体的に示す。
  2. 暮らしやすさを整える:きれいな個室寮・低額(または無料)の寮費・自転車や送迎・Wi-Fiや家電完備・母国の食材が買える環境など、生活の質を上げる。
  3. サポートと人間関係:通訳や相談、買い物・通院の付き添い、日本語学習の支援、ハラスメントゼロ、母国への送金のしやすさ、同じ国の仲間とのつながり。
  4. 将来の道を見せる:育成就労(3年)のあと特定技能1号へ移行できれば、長期就労の道が開けます(さらにその先、分野によっては特定技能2号で家族帯同・在留更新による長期就労の可能性も)。昇給や資格取得の支援とあわせ、入社時にキャリアの道筋を示す。

※ もちろん賃金は最低賃金以上・日本人と同等以上が大前提です。そのうえで「お金以外の価値」を積み上げるのが、転籍時代の定着策です。

⑤ 受け入れ企業がやること・備え

育成就労では「転籍はあり得る」前提に変わります。費用をかけて受け入れた人材に定着してもらうための備えが大切です。

  1. 定着に投資する:適正な賃金・住環境・日々のコミュニケーションを整える。転籍の動機をつくらないことが最大の対策。
  2. ハラスメント・法令違反をなくす:これらは「やむを得ない事情」として転籍の理由になり、企業の責任も問われます。
  3. 正規の手続きで対応する:転籍・早期離職が起きたら、自己判断せず監理団体(育成就労では監理支援機関)・機構・入管に相談する。
  4. 在留と勤怠を一元管理する:誰がいつまでの在留で、どんな就労状況かを把握しておくと、異動や問題の兆しに早く気づけます。

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