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受け入れ企業の実務

技能実習から特定技能へ移行するには?

技能実習を終える人を、特定技能1号で続けて雇いたい——。技能実習2号を良好に修了していれば、試験免除で移行できます。試験免除の条件、移行できる/できないケース、在留資格変更の流れ、一時帰国の要否、在留期限に間に合わないときの対応まで、受け入れ企業の目線で整理しました。

まず要点だけ 技能実習2号を良好に修了していれば、同じ・関連する分野の特定技能1号へ試験免除で移行でき、同じ会社でさらに最長5年働けます。一時帰国は不要(国内で在留資格変更)。書類が在留期限に間に合わないときは特定活動(就労可・最長6か月)で働きながら準備。試験免除は2030年ごろまでの経過措置が目安なので、早めの準備を。

① 移行すると何が変わる?

移行は在留資格が延びるだけではありません。待遇や雇用のあり方も変わります。受け入れ企業が備えるべき変化は、おもに次の3つです。

  1. 在留が延びる:技能実習は最長5年で帰国前提。特定技能1号なら同じ会社でさらに最長5年、分野によっては特定技能2号(在留更新・家族帯同)の道も。育てた人材を続けて雇えます。一時帰国は不要、国内で在留資格を変更できます。
  2. 「労働者」として退職・転職が自由になる:技能実習は原則 転籍できませんでしたが、特定技能は一般の労働者と同じ。本人の意思でいつでも退職でき、同じ分野なら他社へ転職もできます。育てた人が辞める・都市部へ移るリスクがあり、定着策が必要です(→ 転籍・定着の記事)。
  3. 賃金を上げる必要がある:特定技能は日本人と同等以上の報酬が要件。経験者として、技能実習のときより賃金水準が上がるのが普通です。コスト増を見込んでおきます。
建設は賃金の基準が特に厳しい(受入計画の認定) 建設分野は、特定技能受入計画の認定で、時給換算(月給÷月の所定労働時間)が「地域別最低賃金×1.1」と「全国加重平均の最低賃金×1.1」の両方を上回ることが必要です。どちらかを下回ると認定されません(全国加重平均は毎年改定。2024年度=1,055円なので×1.1で約1,161円が目安・最新値は要確認)。あわせて同等の技能を持つ日本人と同等以上月給制も求められます。なお他の分野は「日本人と同等以上」が共通要件で、分野ごとに上乗せの基準がある場合があります。
用語メモ:「全国加重平均」と「全国平均賃金」は別物 上の基準で使う全国加重平均は、かんたんに言えば「全国の最低賃金の平均」です。各都道府県でそれぞれ決まっている最低賃金を、その県で働く人数で重みづけして平均した「最低賃金の全国版」のことで、2024年度=1,055円。一方、よく聞く全国平均賃金は、実際に支払われている給与の平均(賃金センサスなど)で、最低賃金よりずっと高い別の指標です。建設の1.1倍基準で使うのは「最低賃金」の全国加重平均のほうなので、混同しないようにしましょう。

実際に数字で並べると、ちがいは一目です(どちらも時給ベース)。

最低賃金と平均賃金の推移グラフ。
年度最低賃金(全国加重平均)平均賃金(時給換算・概算)
2020902円約1,870円
2021930円約1,860円
2022961円約1,890円
20231,004円約1,930円
20241,055円約2,000円
20251,121円(未公表)

※ 最低賃金は全国加重平均(=全国の最低賃金の平均。厚生労働省)。平均賃金は賃金構造基本統計調査の一般労働者・所定内給与額を時給換算した概算(月額÷約165時間)。平均賃金は最低賃金のおおむね1.8〜2倍で、水準がまったく違います。建設の1.1倍基準で使うのは「最低賃金」の全国加重平均のほうです。

② 試験免除で移行できる条件(良好修了)

特定技能1号は本来、技能試験+日本語試験の合格が必要です。ですが、技能実習2号を「良好に修了」していれば、これらが免除されます。これが移行の最大のメリットです。

「良好に修了」とは、次のどちらかを満たすことです。

  1. 技能実習を2年10か月以上修了し、技能検定3級(または技能実習評価試験の専門級)の実技試験に合格している
  2. または、実習実施者が作成した評価調書などで「良好に修了した」と認められる
「分野が同じ・関連する」かで試験の扱いが変わる 試験免除は、技能実習と同じ・関連する分野の特定技能へ移るときの話です。関連性のない分野へ移る場合は、日本語試験は免除でも技能試験は受験・合格が必要になります。

③ 移行できる/できないケース

移行できる(試験免除)
  • 2号を良好に修了(技能検定3級合格 or 評価調書)
  • 技能実習の職種に対応する特定技能の分野がある(同じ・関連分野)
  • 在留期限に余裕をもって在留資格変更を申請
そのままでは移行できない
  • 技能実習の職種に対応する特定技能の分野がない(別分野は技能試験の合格が必要)
  • 2号を良好に修了していない(評価調書も技能検定もない)
  • その分野が全国の上限に達して新規受け入れが停止している(→ 人数枠の記事

※ 移行できるのは、技能実習の職種が特定技能の対象分野(現在16分野)に対応している場合です。対応の有無は出入国在留管理庁の対応表で確認できます。

そのままでは移行できないとき——試験を受けて移行する道

対応する分野がない・良好修了でない場合でも、必要な試験に合格すれば特定技能1号になれます。特定技能1号は「技能」と「日本語」の2つの試験に合格が必要です(技能実習2号を良好に修了していれば、この2つは免除=②)。

関門合格が必要な試験(いずれか)
技能分野別の「特定技能評価試験」(技能検定3級 相当のレベル)
日本語日本語能力試験(JLPT)N4以上JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)200点以上

気になる「難易度」を、日本人の感覚での目安にすると次のとおりです。

試験レベルの目安
技能:特定技能評価試験その分野で即戦力として働ける技能・知識。水準は技能検定3級(日本人も受ける国家検定の入門級=初級技能者レベル)に相当します。技能検定でいう3級くらい(2級=中級、1級=上級)。
日本語:JLPT N4/JFT-Basic日本語の基礎レベルCEFRでA2)。基本的な日本語が分かり、現場の基本的なやりとりができる程度。JLPTはN5(やさしい)〜N1(難しい)の5段階でN4は下から2番目。日本語は日本人向けの資格に直接の対応はありません。

※ いずれも「それほど高難度ではなく、過去問を中心に対策すれば合格できる」とされますが、分野や本人により差があります。JFT-Basicは年6回あり、JLPT(年2回)より受験機会が多いのも特徴。免除ルート(②)が使えるなら、試験を受ける必要はありません。

試験のしくみ(どこで・いくら・どう受ける)

受けられる場所日本国内+海外の主要送り出し国(ベトナム・インドネシア・フィリピン・ミャンマー・ネパール・カンボジアなど)。海外で受けて来日する人も多い
方式CBT(パソコン)が中心。分野によっては実技もあり。方式・科目・回数は分野ごとに違う
開催頻度分野・国で異なる(国内は分野により毎月など、CBTは受験機会が多め)
申し込み各分野の試験実施機関/Prometricなどのサイトで予約(先着・定員制)
受験料分野ごとに異なる(無料の分野もあれば、数千円程度の分野も)
定員会場(席)ごとの定員制。人気の回は早く埋まるので早めの予約

※ 運営機関・受験料・日程・定員は分野ごとに違うので、必ず各分野の公式「試験実施案内」で最新情報を確認してください。

どんな問題が出る?(例)

特定技能評価試験
  • 学科=選択式(CBT)。仕事の知識・安全・衛生など。分野により実技
  • 例(イメージ・外食):「料理を提供する前に必ず行うことは? → ①…/②手洗い・消毒/③…」のような選択式
  • 公式サンプルは出入国在留管理庁の特定技能総合支援サイトや各分野の実施機関で公開
技能検定3級
  • 学科(筆記)と実技の両方に合格が必要です(技能だけではありません)。
  • 学科○×式(真偽法)30問。例(イメージ):「作業前に保護メガネなどの保護具を着用する。→ ○」
  • 実技:制限時間内に実際に作業して仕上げる「製作等作業試験」など(職種により計画立案等作業試験)。例:左官なら決められた範囲をコテで塗る

※ 技能検定の過去問題は中央職業能力開発協会(JAVADA)の「技能検定試験問題公開サイト」で、特定技能評価試験の情報は出入国在留管理庁の特定技能総合支援サイトで確認できます(実際の出題形式・サンプルが見られます)。

④ 手続きの流れ

移行は在留資格変更許可申請(地方出入国在留管理局)で行います。流れは次のとおりです。

このうちSTEP2の支援STEP4の申請を自社でやらず外部に頼むと、費用がかかります。目安は次のとおりです。

何に費用の目安
登録支援機関に支援を委託(STEP2)月額 約1.5〜3万円/人(入管庁調査の平均は約28,000円/人)。別途 初期費用がかかることも。自社で支援すれば委託費は不要(ただし支援体制が必要)
申請を行政書士などに依頼(STEP4)1件あたり 約10〜20万円自分で申請すれば不要
在留資格変更許可の手数料(国へ・STEP4)許可時に 6,000円(オンライン申請は5,500円・2025年4月改定)。これは自分で申請しても必要

※ このほか、分野の協議会加入(無料の分野が多い)、健康診断、住居の準備などの費用がかかることもあります。受け入れ全体の費用は 受け入れ費用の記事 もどうぞ。

⑤ 在留期限に間に合わないとき

書類の準備が在留期限までに間に合わないこともあります。その場合は、特定技能で就労予定の会社で働きながら準備できる「特定活動(就労可・最長6か月)」に在留資格を変更できます。その期間中に、特定技能1号への変更を申請します。

ギリギリは危険。早めに動く 一時帰国は不要ですが、在留期限の2〜3か月前には準備を始めるのが安心です。期限が切れてからでは選べる手が限られます。

⑥ いつから準備する?(経過措置)

  1. 在留期限の2〜3か月前から:雇用契約・支援計画・書類の準備、申請には時間がかかります。
  2. 試験免除は2030年ごろまでが目安:育成就労への移行にともなう経過措置です。対象者は早めに。
  3. 分野の全国上限にも注意:特定技能は分野ごとに受入れ見込み数(上限)があり、達すると新規が止まることがあります(人数枠の記事)。

移行の準備チェック

  1. 本人の在留期限と「良好修了」の証明(技能検定3級 or 評価調書)を確認
  2. 技能実習の職種に対応する特定技能の分野があるか確認
  3. 雇用契約+支援計画を準備(登録支援機関への委託も検討)
  4. 分野の協議会加入・必要書類をそろえる
  5. 在留期限の2〜3か月前に在留資格変更を申請(間に合わなければ特定活動)

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