① 移行すると何が変わる?
移行は在留資格が延びるだけではありません。待遇や雇用のあり方も変わります。受け入れ企業が備えるべき変化は、おもに次の3つです。
- 在留が延びる:技能実習は最長5年で帰国前提。特定技能1号なら同じ会社でさらに最長5年、分野によっては特定技能2号(在留更新・家族帯同)の道も。育てた人材を続けて雇えます。一時帰国は不要、国内で在留資格を変更できます。
- 「労働者」として退職・転職が自由になる:技能実習は原則 転籍できませんでしたが、特定技能は一般の労働者と同じ。本人の意思でいつでも退職でき、同じ分野なら他社へ転職もできます。育てた人が辞める・都市部へ移るリスクがあり、定着策が必要です(→ 転籍・定着の記事)。
- 賃金を上げる必要がある:特定技能は日本人と同等以上の報酬が要件。経験者として、技能実習のときより賃金水準が上がるのが普通です。コスト増を見込んでおきます。
実際に数字で並べると、ちがいは一目です(どちらも時給ベース)。
| 年度 | 最低賃金(全国加重平均) | 平均賃金(時給換算・概算) |
|---|---|---|
| 2020 | 902円 | 約1,870円 |
| 2021 | 930円 | 約1,860円 |
| 2022 | 961円 | 約1,890円 |
| 2023 | 1,004円 | 約1,930円 |
| 2024 | 1,055円 | 約2,000円 |
| 2025 | 1,121円 | (未公表) |
※ 最低賃金は全国加重平均(=全国の最低賃金の平均。厚生労働省)。平均賃金は賃金構造基本統計調査の一般労働者・所定内給与額を時給換算した概算(月額÷約165時間)。平均賃金は最低賃金のおおむね1.8〜2倍で、水準がまったく違います。建設の1.1倍基準で使うのは「最低賃金」の全国加重平均のほうです。
② 試験免除で移行できる条件(良好修了)
特定技能1号は本来、技能試験+日本語試験の合格が必要です。ですが、技能実習2号を「良好に修了」していれば、これらが免除されます。これが移行の最大のメリットです。
「良好に修了」とは、次のどちらかを満たすことです。
- 技能実習を2年10か月以上修了し、技能検定3級(または技能実習評価試験の専門級)の実技試験に合格している
- または、実習実施者が作成した評価調書などで「良好に修了した」と認められる
③ 移行できる/できないケース
- 2号を良好に修了(技能検定3級合格 or 評価調書)
- 技能実習の職種に対応する特定技能の分野がある(同じ・関連分野)
- 在留期限に余裕をもって在留資格変更を申請
- 技能実習の職種に対応する特定技能の分野がない(別分野は技能試験の合格が必要)
- 2号を良好に修了していない(評価調書も技能検定もない)
- その分野が全国の上限に達して新規受け入れが停止している(→ 人数枠の記事)
※ 移行できるのは、技能実習の職種が特定技能の対象分野(現在16分野)に対応している場合です。対応の有無は出入国在留管理庁の対応表で確認できます。
そのままでは移行できないとき——試験を受けて移行する道
対応する分野がない・良好修了でない場合でも、必要な試験に合格すれば特定技能1号になれます。特定技能1号は「技能」と「日本語」の2つの試験に合格が必要です(技能実習2号を良好に修了していれば、この2つは免除=②)。
| 関門 | 合格が必要な試験(いずれか) |
|---|---|
| 技能 | 分野別の「特定技能評価試験」(技能検定3級 相当のレベル) |
| 日本語 | 日本語能力試験(JLPT)N4以上 / JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)200点以上 |
気になる「難易度」を、日本人の感覚での目安にすると次のとおりです。
| 試験 | レベルの目安 |
|---|---|
| 技能:特定技能評価試験 | その分野で即戦力として働ける技能・知識。水準は技能検定3級(日本人も受ける国家検定の入門級=初級技能者レベル)に相当します。技能検定でいう3級くらい(2級=中級、1級=上級)。 |
| 日本語:JLPT N4/JFT-Basic | 日本語の基礎レベル(CEFRでA2)。基本的な日本語が分かり、現場の基本的なやりとりができる程度。JLPTはN5(やさしい)〜N1(難しい)の5段階でN4は下から2番目。日本語は日本人向けの資格に直接の対応はありません。 |
※ いずれも「それほど高難度ではなく、過去問を中心に対策すれば合格できる」とされますが、分野や本人により差があります。JFT-Basicは年6回あり、JLPT(年2回)より受験機会が多いのも特徴。免除ルート(②)が使えるなら、試験を受ける必要はありません。
試験のしくみ(どこで・いくら・どう受ける)
| 受けられる場所 | 日本国内+海外の主要送り出し国(ベトナム・インドネシア・フィリピン・ミャンマー・ネパール・カンボジアなど)。海外で受けて来日する人も多い |
|---|---|
| 方式 | CBT(パソコン)が中心。分野によっては実技もあり。方式・科目・回数は分野ごとに違う |
| 開催頻度 | 分野・国で異なる(国内は分野により毎月など、CBTは受験機会が多め) |
| 申し込み | 各分野の試験実施機関/Prometricなどのサイトで予約(先着・定員制) |
| 受験料 | 分野ごとに異なる(無料の分野もあれば、数千円程度の分野も) |
| 定員 | 会場(席)ごとの定員制。人気の回は早く埋まるので早めの予約を |
※ 運営機関・受験料・日程・定員は分野ごとに違うので、必ず各分野の公式「試験実施案内」で最新情報を確認してください。
どんな問題が出る?(例)
- 学科=選択式(CBT)。仕事の知識・安全・衛生など。分野により実技も
- 例(イメージ・外食):「料理を提供する前に必ず行うことは? → ①…/②手洗い・消毒/③…」のような選択式
- 公式サンプルは出入国在留管理庁の特定技能総合支援サイトや各分野の実施機関で公開
- ★学科(筆記)と実技の両方に合格が必要です(技能だけではありません)。
- 学科:○×式(真偽法)30問。例(イメージ):「作業前に保護メガネなどの保護具を着用する。→ ○」
- 実技:制限時間内に実際に作業して仕上げる「製作等作業試験」など(職種により計画立案等作業試験)。例:左官なら決められた範囲をコテで塗る
※ 技能検定の過去問題は中央職業能力開発協会(JAVADA)の「技能検定試験問題公開サイト」で、特定技能評価試験の情報は出入国在留管理庁の特定技能総合支援サイトで確認できます(実際の出題形式・サンプルが見られます)。
④ 手続きの流れ
移行は在留資格変更許可申請(地方出入国在留管理局)で行います。流れは次のとおりです。
- STEP 1特定技能の雇用契約を結ぶ受け入れ企業と本人で特定技能雇用契約を締結(報酬は日本人と同等以上)。
- STEP 21号特定技能外国人支援計画をつくる生活・職業上の支援計画を作成。自社で支援するか、登録支援機関に委託します。
- STEP 3必要書類をそろえる評価調書 or 技能検定合格証、特定技能雇用契約書、支援計画書、分野の協議会への加入、各種証明など。
- STEP 4在留資格変更許可申請地方出入国在留管理局へ申請。許可までおおむね1〜2か月が目安。
- STEP 5許可 → 特定技能1号で就労開始新しい在留カードを受け取り、特定技能として就労を続けます。
このうちSTEP2の支援とSTEP4の申請を自社でやらず外部に頼むと、費用がかかります。目安は次のとおりです。
| 何に | 費用の目安 |
|---|---|
| 登録支援機関に支援を委託(STEP2) | 月額 約1.5〜3万円/人(入管庁調査の平均は約28,000円/人)。別途 初期費用がかかることも。自社で支援すれば委託費は不要(ただし支援体制が必要) |
| 申請を行政書士などに依頼(STEP4) | 1件あたり 約10〜20万円。自分で申請すれば不要 |
| 在留資格変更許可の手数料(国へ・STEP4) | 許可時に 6,000円(オンライン申請は5,500円・2025年4月改定)。これは自分で申請しても必要 |
※ このほか、分野の協議会加入(無料の分野が多い)、健康診断、住居の準備などの費用がかかることもあります。受け入れ全体の費用は 受け入れ費用の記事 もどうぞ。
⑤ 在留期限に間に合わないとき
書類の準備が在留期限までに間に合わないこともあります。その場合は、特定技能で就労予定の会社で働きながら準備できる「特定活動(就労可・最長6か月)」に在留資格を変更できます。その期間中に、特定技能1号への変更を申請します。
⑥ いつから準備する?(経過措置)
- 在留期限の2〜3か月前から:雇用契約・支援計画・書類の準備、申請には時間がかかります。
- 試験免除は2030年ごろまでが目安:育成就労への移行にともなう経過措置です。対象者は早めに。
- 分野の全国上限にも注意:特定技能は分野ごとに受入れ見込み数(上限)があり、達すると新規が止まることがあります(人数枠の記事)。
移行の準備チェック
- 本人の在留期限と「良好修了」の証明(技能検定3級 or 評価調書)を確認
- 技能実習の職種に対応する特定技能の分野があるか確認
- 雇用契約+支援計画を準備(登録支援機関への委託も検討)
- 分野の協議会加入・必要書類をそろえる
- 在留期限の2〜3か月前に在留資格変更を申請(間に合わなければ特定活動)
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