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帰国・トラブル対応

技能実習生に「辞めたい」と言われたら
途中帰国の前に、まず聞くこと

最初にやることは、航空券の手配でも書類でもありません。なぜ辞めたいのかを聞くことです。理由は4つに分かれて、どれかで進む道がまったく変わります。会社側に原因があるときだけは、引き止めではなく是正が先になります。

「辞めたい」と言われたら、通訳を入れて叱った本人以外が理由を聞く。理由は「一時的なもの」(ホームシック・同僚との摩擦・体調・寮のこと)、「お金のこと」(手取りが思ったより少ない・残業が減った・天引きが分からない)、「会社側に原因がある」(暴言・暴力・ハラスメント・賃金不払い・契約と違う仕事)、「本人と家族の事情」(親の病気・本人の病気やけが)の4つ。一時的なものとお金のことは引き止められる、会社側に原因があるときは引き止めない、本人と家族の事情は一時帰国で済むかを見る。
理由を4つに分けると、進む道が決まる。会社側に原因があるときだけは、引き止めではなく是正が先。

まず、なぜ辞めたいのかを聞く

「辞めたい」「国に帰りたい」という言葉は、そのままの意味とはかぎりません。本当に日本を離れたいのか、この会社が続けられないだけなのか、それとも今週がつらいだけなのか。ここを分けないまま帰国の段取りに入ると、本来は続けられた人を帰してしまいます。

一時的なもの引き止められる
ホームシック 同僚との摩擦 体調 寮のこと 冬の寒さ

会社にできること 話を聞いて時間を置く/班や寮の組み合わせを変える/母国語で相談できる先を伝える

お金のこと引き止められる
手取りが少ない 残業が減った 天引きが分からない 母国への送金

会社にできること 給与明細を一緒に見る/寮費・光熱費の天引きを説明する/仕事量の見通しを伝える

会社側に原因がある引き止めない
暴言 暴力 賃金不払い 契約と違う仕事

会社がやること 引き止めではなく是正/事実関係を確認する/転籍の申出を妨げない

本人と家族の事情一時帰国か
家族の病気 本人の病気やけが 一時帰国で済むか

会社にできること 実習をやめるのか、一時帰国で済むのかを分ける/労災なら治療と補償が先/在留カードの扱いは一時帰国と本帰国で逆(帰国に進むとき)

聞き方で3つだけ

通訳を入れる日本語だけだと「大丈夫です」で終わる
叱った本人以外が聞く相手が聞き役では本音が出ない
聞いた日・聞いた人・内容を残す理由は次の節で

会社だけで抱えない。監理団体に相談する

団体監理型(ほとんどの受け入れ企業がこちら)なら、技能実習生からの相談に応じ、会社と本人に助言・指導その他の必要な措置を講じることは監理団体の業務の基準として定められています(技能実習法施行規則第52条第14号)。会社だけで「様子を見よう」と決めないでください。

そしてもう1つ。この相談を受けた場面は、あとから書類に残ります。

実習先変更希望の申出書(参考様式第1-44号)の見本。相談状況の欄には、最初に相談した日、相談した相手(監理団体か実習実施者かを丸で囲む)、相談した人の氏名、相談結果(対応してくれない/対応が不十分のチェック)を技能実習生本人が書く。
転籍を申し出るときに本人が書く申出書。1枚目に相談状況の欄がある。

本人が申出書に書く3つ

相談時期監理団体か会社に最初に相談した日
相談した人監理団体か会社かに丸、相手の氏名も
相談結果「対応してくれない」「対応が不十分」にチェック

「忙しいから後で」と流したことは、名前つきで機構に出る書類に残ります。その日のうちに監理団体へ相談して動いていれば、残るのはその記録です。

国が出している記載例が、そのまま現場の話になっている

機構が公表している対応通知書の記載例には、調査の内容として次のような文章が載っています(登場人物はすべて架空の表記です)。

  • 実習生から相談を受けた社長が、「コミュニケーションの一種だと思い、特に調査をしなかった」と答えた
  • あらためて確認させたところ、主任が「いつまで経っても仕事を覚えないので、ヘルメットの上から頭を叩いたことが複数回あった」と認めた
  • 主任は事実を認めて反省しているが、実習生は転籍したいと言っている
  • 監理団体は、調査の結果、暴力があったと認められると判断した

国が記載例に選ぶくらい、よくある形だということです。「叱っただけ」「冗談のつもり」で処理した相談が、あとから申出書の相談状況の欄になって戻ってきます。

引き止められるものと、引き止めてはいけないもの

理由が一時的なことやお金のことなら、話して直せるものを直し、続けられるようにすることに問題はありません。本人も稼ぐために日本に来ています。稼げないまま途中でやめるのは、本人にとっても不本意なことが多いからです。

引き止められるのは、一時的なこと・お金のこと・本人と家族の事情の一部。本人に話すのは本人の損得=残りの実習期間(1号1年・2号2年・3号2年)は途中でやめるとそこで終わる、第2号を良好に修了していれば特定技能1号へ移るときに試験が免除される道がある、積み上げた期間と技能検定が次につながる。引き止めてはいけないのは、会社側に原因があるとき。やってはいけないこと=転籍の申出を妨げる・握りつぶす、申出書の用紙を求められたのに渡さない、監理団体には言わなくていいと止める、今は忙しいから後でと先延ばしにする。採用にかけた費用は会社側の事情で、本人に話す材料にはしない。
引き止めていいかどうかは、理由で決まる。

本人に話すのは、本人にとっての損得だけ

途中でやめると本人が何を失うのかは、正直に説明する材料になります。数字ではなく、年数と道筋で伝わります。

続けると 途中でやめると
第1号(1年)→ 第2号(2年)→ 第3号(2年)積み上げてきた期間は、そこで終わる
技能検定を受けて次の号へ進む受検の機会がなくなる。次の実習先でも同じ職種とはかぎらない
第2号を良好に修了 → 特定技能1号へ同じ分野の特定技能1号へ移るときの試験免除という道が使えなくなることがある
緑=続けたときに残るもの赤=途中でやめたときに失うもの特定技能への移行は 技能実習から特定技能への移行 に詳しく書いています。

会社側に原因があるときは、引き止めが違反になります

理由が暴言・暴力・ハラスメント、賃金不払い、契約と違う仕事だったときは、説得する場面ではありません。次の4つは、そのまま不利に働きます。

転籍の申出を妨げる握りつぶすのも同じ
申出書の用紙を渡さない監理団体は渡す必要があるとされている
「監理団体には言わなくていい」と止める
「今は忙しいから後で」と先延ばしにする

後ろの2つは、申出書に「対応してくれない」と書かれる形で残ります。

会社側に原因があったときの対応

令和6年11月1日の改正で、転籍を認め得る「やむを得ない事情」となり得る事柄が技能実習制度運用要領に明記されました。それまでは「どのような場合に転籍が認められるのか分かりにくい」「主張が食い違うと手続が進まない」という指摘があった、と機構自身が書いています。

人権侵害行為を受けている

暴行や各種ハラスメント(暴言、脅迫・強要、セクハラ、マタハラ、パワハラなど)。

重大悪質な法令違反行為があった

賃金の不払いなど。

重大悪質な契約違反行為があった

雇用条件書と違う仕事・違う条件で働かせているなど。

実習実施者の倒産

会社の側が実習を続けられなくなった場合。

会社(団体監理型なら監理団体)がやることは、直ちに事実関係の確認と是正指導です。

録音・写真などの資料を確かめる資料があれば、やむを得ない事情と認めやすくなる
調査内容を具体的に書いて通知する「調べました」だけでは手続きにならない
是正したら「やむを得ない事情には当たらない」になるのか

対応通知書(第1-45号)で「連絡調整を開始しない」を選ぶときの理由の1つに、「あなたが申し出た技能実習を続けることができない事情が存在したものの、当該事情が是正されたことで、転籍を認め得るやむを得ない事情には当たらないと認められたため」という選択肢が用意されています。つまり、事実があっても是正すれば当たらないと判断する余地は制度上あります。

ただしこれは会社が一方的に決める話ではありません。判断したうえで調査の内容を具体的に書いて本人に通知するところまでが手続きです。本人が納得しなければ、機構の母国語相談窓口という経路が別にあります。

それでも続けられないときの手続き

話した結果、転籍または帰国に進むことになったときの手続きです。ここからは紙の話になります。

転籍に進むとき(申出書からの5手)

申出書を渡す→署名して原本を本人に返す→団体監理型の会社は直ちに監理団体へ写し→直ちに事実関係の確認と是正指導→遅滞なく対応通知書で通知。やむを得ない事情があると認めたら、申出書と対応通知書の写しを添えて技能実習実施困難時届出書を機構の認定課へ。
申出を受けてから届出までの5手。
受け入れの形申出書を受ける調査・是正指導対応通知書困難時届出書
団体監理型実習実施者または監理団体(受けたら署名して原本返却)監理団体監理団体監理団体が省令様式第18号を提出。実習実施者は速やかに監理団体へ通知する
企業単独型実習実施者(受けたら署名して原本返却)実習実施者実習実施者実習実施者が省令様式第9号を提出
誰が何をするか。提出先はどちらも、実習実施者の住所を管轄する機構の地方事務所・支所の認定課。

転籍先が決まるまでの間

転籍に向けた手続の期間中で技能実習を行えない場合は、必要に応じ週28時間以内に限り一般的な就労が認められる。転籍先の確保ができなかった場合で特定技能への移行を希望する場合などには、特定技能へ移行するための特定活動が付与される。
転籍手続中と、転籍先が見つからなかったときの在留の扱い。

どちらも、令和6年11月1日の運用改善で加わった在留管理制度上の措置です。

帰国に進むとき

まず一時帰国なのか、本帰国なのかをはっきりさせます。在留カードの扱いが逆になります。くわしくは 帰国手続きの⑤。

一時帰国(実習は続ける)は、日本から母国へ行ってまた戻る。在留カードは返納せず、みなし再入国許可で出国する。会社は出国と再入国の日程を押さえ、その期間の休みの扱いを決める。本帰国(実習をやめる)は片道。在留カードは空港の出国審査で提示して失効させる。会社は帰国の意思を書面で確認し、困難時届出と航空券の手配をする(旅費は会社・監理団体の負担)。
戻ってくるのかどうかで、在留カードの扱いが変わる。

本帰国のときにやることです。満了で帰るときと同じ流れです。

  1. 決まったら帰国の意思を書面で確認。困難時届出書を遅滞なく。航空券の手配
  2. 出国前住民税の一括徴収・年末調整・精算・保険証の回収
  3. 出国当日カードとパスポートは本人が持つ
  4. 出国後資格喪失届・外国人雇用状況の届出・脱退一時金

詳しい手順と期限は 技能実習生の帰国 に書いています。

帰国旅費を本人に払わせる自己都合でもできません。「本人が辞めると言ったから本人持ち」は通らない

補足

この記事のもとになった決まり内容
技能実習制度運用要領(令和6年11月1日改正)転籍を認め得る「やむを得ない事情」の明確化。参考様式第1-44号・第1-45号の新設。帰国旅費の負担と、帰国の意思を書面で確認すること
技能実習法施行規則 第52条第14号監理団体の業務の基準。相談に応じ、助言・指導その他の必要な措置を講じること
参考様式第1-44号実習先変更希望の申出書(9か国語・記載例あり)
参考様式第1-45号実習先変更希望の申出に係る対応通知書(9か国語・記載例あり)
省令様式第18号 / 第9号技能実習実施困難時届出書(団体監理型 / 企業単独型)

「いつ相談を受けたか」が、あとで効いてきます。

申出書に書かれるのは、最初に相談した日と、相談した人の名前です。AMSTIは外国人材の勤怠・在留期限・労務書類をまとめて管理するシステム。日々の出勤入力と一緒に、面談や相談の記録も1人ずつ残せます。在留期限や満了日も一元化できるので、帰国・更新の準備を前もって進められます。30日間無料(クレジットカード登録は不要)。

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