まず要点だけ
① 「雇うだけで72万円」はウソ
まず大前提です。「外国人を1人雇うだけで、自動的に72万円の助成金がもらえる」という制度は存在しません。これはSNSで広まったデマで、報道の取材に対して厚生労働省も「外国人を採用すると1人に対して72万円の助成金がもらえるという制度は存在しません」とコメントしています。実在する企業に対して、この誤解をもとに不買運動を呼びかける投稿まで出て、風評被害になった例もあります。
「外国人を雇うだけで、会社に72万円が入る」「日本人より外国人を雇った方が得」——こうした投稿が拡散していますが、そんな制度はありません。
実在するのは、条件を満たして申請した会社が、環境整備・正社員転換・賃上げなどの取り組みに対してあとから助成される制度。雇用そのものへの“ごほうび”ではありません。
※ 出典:女性自身(2025年8月2日配信)の取材に対する厚生労働省のコメント。なお、厚生労働省がこのウワサについて公式文書で見解を示したものは確認できませんでした。
② “72万円”の火元になった本物の制度
「72万円」という数字には、もとになった本物の助成金があります。それが人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)です。これは「外国人を雇ったらもらえる報酬」ではなく、外国人が安心して働けるように職場の環境を整え、定着に取り組んだ会社に対して、あとから助成する制度です。
改正前のこの助成金は「支給対象経費の2/3・上限72万円」(賃金要件を満たした場合。満たさない場合は1/2・上限57万円)でした。この「上限72万円」が、「72万円」という数字のもとになったと見られます。令和7年度からは、かかった経費の割合ではなく1措置20万円・上限80万円の定額制に変わり、令和8年度も同じです。
受給するには、認定を受けた就労環境整備計画にもとづいて、次の取り組みを新たに導入・実施する必要があります。

選択の2つ(一時帰国休暇・マニュアルと標識)で実際にやること

- 計画を出す措置を始める前に
- 計画の認定労働局
- 措置を導入必須2つ+1つ以上
- 6か月の定着離職率15%以下
- 支給申請ここではじめて支給
※ 出典:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」改正前パンフレット・令和8年度パンフレット・令和8年度Q&A(問2・問24〜問34)・支給要領。金額・要件は年度ごとに改正されるため、申請前に必ず最新のパンフレットと労働局でご確認ください。
③ 受け入れ企業が実際に狙える助成金
では、外国人を雇う会社が現実的に使える助成金にはどんなものがあるのか。代表的なものを並べます。金額や要件は年度ごとに変わるので、めやすとして見てください。
| 助成金 | どんなとき | 金額のめやす(令和8年度) |
|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境整備助成コース) | 外国人が働きやすい環境(多言語化・相談体制など)を新たに整え、定着に取り組んだとき | 1措置20万円・上限80万円 |
| キャリアアップ助成金 (正社員化コース) | 有期・無期雇用の社員を正社員に転換したとき(技能実習・特定技能1号は対象外→④) | 中小・1人あたり:有期→正規 80万円(重点支援対象者)/40万円、無期→正規 40万円/20万円 |
| キャリアアップ助成金 (賃金規定等改定コース) | 有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定したとき(技能実習生・特定技能1号も対象) | 中小・1人あたり:3%以上4万円/4%以上5万円/5%以上6.5万円/6%以上7万円。昇給制度の新設で1事業所+20万円 |
| キャリアアップ助成金 (賃金規定等共通化コース) | 有期雇用労働者等と正社員に共通の賃金規定等を新たに設けたとき | 中小・1事業所60万円 |
| 人材開発支援助成金 | 従業員に職業訓練を計画的に行ったとき(法令で義務付けられた講習や、日常会話レベルの日本語講習は対象外) | 訓練経費・賃金の一部 |
| 業務改善助成金 | 事業場内最低賃金を50円・70円・90円以上引き上げ、生産性向上の設備投資等を行ったとき(賃上げの対象は雇用保険に入っている労働者。技能実習生も除かれていない) | 設備投資等の費用×4/5(事業場内最低賃金1,050円未満)または3/4(1,050円以上)。例:50円コース・2〜3人で上限40万円(事業場規模30人未満は70万円)、90円コース・10人以上で上限600万円 |
| 自治体独自の補助金 | 都道府県・市区町村が、外国人材の採用・定着・住居などを独自に支援(対象は自治体ごとに違う→⑤) | 自治体により異なる |
※ 出典:厚生労働省 キャリアアップ助成金パンフレット(令和8年度)・人材開発支援助成金パンフレット(令和8年8月)・同Q&A(問27・問28)・業務改善助成金(令和8年度)。金額は中小企業の場合のめやすです。
④ 在留資格別「使える/使えない」早見表
ここが受け入れ企業にとって一番のポイントです。同じ「外国人」でも、在留資格によって使える助成金が変わります。とくにキャリアアップ助成金の正社員化コースは、帰国が前提の技能実習・特定技能1号では使えません。一方で、同じキャリアアップ助成金でも賃金規定等改定コースなど、正社員化以外のコースは技能実習生・特定技能1号も対象です。
| 在留資格 | 就労環境整備 助成コース | キャリアアップ (正社員化) | キャリアアップ (賃金規定等改定) | 人材開発支援 (訓練) |
|---|---|---|---|---|
| 技能実習 | ○ 雇用保険の被保険者なら対象 | × 「帰国することが前提の制度であるため」 | ○ | △ OJTを含む訓練は対象外。Off-JT中心なら対象になり得る |
| 特定技能1号 | ○ 「苦情・相談体制」は措置に数えない | × 「帰国が前提となっているため(在留期間5年<更新不可>の制限あり)」 | ○ | ○ |
| 特定技能2号 | ○ | ○ 有期から正社員化しても対象(通算5年超の有期は無期扱いで額が下がる) | ○ | ○ |
| 技術・人文知識・国際業務など(就労目的の在留資格) | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 育成就労 (2027年〜予定) | 要確認 制度開始後の取扱いを確認 | 要確認 | 要確認 | 要確認 |
※ スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
※ 出典:厚生労働省 キャリアアップ助成金Q&A(令和8年7月29日版) 共通Q-6、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)Q&A 問2・問25、人材開発支援助成金Q&A 問27。上表は代表的な取扱いのめやすです。在留資格・契約形態・年度の改正で結論が変わることがあるため、申請前に必ず労働局・社会保険労務士にご確認ください。技能実習から特定技能への移行は 技能実習から特定技能へ移行するには? で解説しています。
⑤ 例:技能実習生を雇っている会社はいくらもらえる?
技能実習生を雇っている会社が取り組みをしたとき、いくらになるかを3つの例で示します。中小企業で、すべての要件を満たした場合の目安です。

※ 金額は令和8年度の各助成金の額をもとにした試算で、支給を約束するものではありません。出典:就労環境整備助成コース・キャリアアップ助成金・業務改善助成金(Q&A 問21・問22・問47)(厚生労働省)、山口県 外国人材確保定着支援補助金、福岡県 外国人材受入企業支援補助金。
⑥ もらうまでの流れと注意点
助成金は「申請すればすぐ振り込まれる」ものではありません。多くは「先に計画 → 取り組み → あとから支給(後払い)」という順番です。雇ってから慌てて申請しても間に合わないことが多いので、流れを知っておきましょう。
- 1. 計画の作成・提出(事前)取り組みを始める前に、就労環境整備計画などを作成し、労働局・ハローワークへ提出して認定を受けます(就労環境整備計画は、外国人を1人以上雇ってから提出します)。取り組みを始めたあとでは間に合わないのが基本です。
- 2. 取り組みの実施計画にそって、多言語化・相談体制づくり・正社員転換・賃上げ・訓練などを実施します(業務改善助成金は交付決定のあとに設備を導入します)。出勤・賃金などの記録も残します。
- 3. 支給申請 → 審査 → 支給(後払い)定着(低い離職率)などの要件を満たしたら支給申請。審査を経て、あとから助成金が振り込まれます。
⑦ よくある疑問(社労士に頼む?自力?100%もらえる?)
申請は社労士に頼む?それとも自力?
厚生労働省の雇用関係助成金の申請書類の作成・提出代行は、社会保険労務士(社労士)の独占業務です(行政書士や無資格の代行業者に頼むのは社労士法違反になります)。一方で、自社で自分の分を申請するのは“代行”ではないので問題ありません。
条件さえ合えば、枠の100%もらえる?
雇用関係助成金は、ほかの会社と競う「採択」の仕組みではありません。ただし、次の点に注意が必要です。
助成金を検討するときのチェック
受け入れ企業が助成金を考えるときの順番をまとめます。
助成金の申請、労務書類はすぐ出せますか?
助成金の審査では、出勤簿・賃金台帳・労働条件通知書といった「日ごろの労務管理の記録」が必ず求められます。AMSTIは外国人材の勤怠・労務書類をまとめて管理するシステム。日々の出勤入力から出勤簿や各種帳簿が整い、いざ申請というときに必要書類をすぐ用意できます。30日間無料(クレジットカード登録は不要)。
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