技能実習生の給与の相場(業種別・年数別)2025年6月時点
厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、在留資格ごとの賃金を業種別・勤続年数別に出しています。ここでの給与は6月分の給与のうち、残業代・休日出勤手当・深夜手当と賞与を除いたもの(所定内給与額)です。
技能実習生全体の相場(月・残業代を除く)真ん中の人は185,300円。半分の人が172,900〜203,400円に入ります。平均は190,300円、特定技能は平均221,400円です。
令和8年度の最低賃金(2026年10〜12月に改定)で試算します。
月給の下限=最低賃金×(365−年間休日)÷12×1日の時間(100円未満切り上げ)。相場の目安=2025年6月の相場×1.116(全国加重平均の最低賃金が1,055円→1,177円に上がった分)で引き直した試算で、調べた相場ではありません。最低賃金は厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金 答申状況」(発効日は予定)。特定最低賃金がかかる業種はそちらも確認してください。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」外国人労働者 第1表(在留資格=技能実習、産業別、男女計)。残業時間は超過実労働時間数。農業・漁業は調査の対象外。人数の少ない業種は省略。
製造業は基本の給与がいちばん低いが、残業が多く、残業込みでは建設業を上回る。
勤続年数で見た相場(残業代を除く)2025年6月時点
0年→3〜4年 +38,700円
0年→3〜4年 +1,300円
0年→3〜4年 +33,100円
建設業と介護は年数とともに上がり、製造業はほぼ横ばい。出典:同調査 外国人労働者 第2表。
勤続年数の比較は、同じ人を3年追ったものではなく、6月時点で勤続0年の人・1〜2年の人・3〜4年の人をそれぞれ集めた数字です。3号へ進んだ人や、2号から昇給した人が3〜4年に入ります。
職種別(溶接・とび・食品加工など)の相場は無いの?
国の統計で技能実習生の給与が分かるのは業種(産業)別までです。溶接・とび・食品加工といった職種ごとの技能実習生の給与は公表されていません。また、この調査は農業・漁業を対象にしていないため、農業・漁業の技能実習生の相場はここには出てきません。人数の少ない業種(生活関連サービスなど)は数字がぶれやすいので、図から外しています。
相場はあくまで目安です。自社の技能実習生の給与は、2つの下限で決まります。ひとつは都道府県の最低賃金(業種によっては特定最低賃金)、もうひとつは技能実習ならではの「同じ仕事をする日本人と同等以上」です。決め方は 技能実習生の最低賃金 にまとめています。
10月は最低賃金が変わる月です。令和8年度の改定で、たとえば山口県は時間額1,043円から1,101円になります(令和8年10月8日発効)。発効日は都道府県ごとに違います。時給制の実習生は、発効日をまたぐ月の給与計算で時給を切り替えます。
給与明細1枚で、総支給から手取りまで
1年目の技能実習生の給与明細を、上から順に計算してみます。数字はすべて説明用の例です。前提は下のとおりです。
| 支給 | ||
|---|---|---|
| 基本給(月給) | 200,000円 | 時給に直すと約1,154円(山口県の最低賃金1,101円を上回る) |
| 残業手当 | 14,420円 | 1時間あたり1,442円(25%増し)×10時間 |
| 総支給 | 214,420円 | |
| 法令で引くもの | ||
| 健康保険料 | 11,165円 | 山口県の料率(10.15%)の半分 |
| 子ども・子育て支援金 | 253円 | 2026年4月分から |
| 厚生年金保険料 | 20,130円 | 料率18.3%の半分 |
| 雇用保険料 | 1,072円 | 総支給の0.5%(令和8年度・一般の事業) |
| 所得税 | 3,700円 | 国税庁の月額表(扶養なし)で決まる |
| 住民税 | 0円 | 1年目はかからないのが通常 |
| 協定を結んで引くもの | ||
| 寮費 | 15,000円 | 借上げ社宅の家賃60,000円÷入居4人 |
| 水道光熱費 | 5,000円 | 実際に払った額÷使う人数 以内 |
| Wi-Fi | 1,000円 | 月額4,000円÷4人 |
| 控除合計 | 57,320円 | |
| 手取り(差引支給額) | 157,100円 | 総支給の約73% |
引かれている57,320円は、2つに分かれます。
都道府県や業種が違うと、何が変わるか
- 健康保険料率は協会けんぽの都道府県支部ごとに違います(令和8年度の山口県は10.15%)。健康保険組合に入っている会社は組合の料率です。
- 雇用保険料の労働者負担は、令和8年度は一般の事業が5/1,000、農林水産・清酒製造と建設の事業が6/1,000です。
- 厚生年金保険料率(18.3%)と子ども・子育て支援金率(0.23%)は全国同じです。
- 40歳以上になると介護保険料が加わります。技能実習生で該当する人は多くありませんが、年齢は確認しておきます。
天引きは2種類。寮費・光熱費は協定を結んで引く
給与は全額を本人に払うのが原則です(労働基準法第24条)。そのうえで、給与から引いてよいのは次の2つだけです。
- 法令で引くもの社会保険料・雇用保険料・所得税・住民税。法令に定めがあるので、協定は要りません。
- 協定を結んで引くもの寮費・水道光熱費・食費など。事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、それが無ければ労働者の過半数を代表する者と書面で協定を結んだときだけ引けます。労働基準監督署への届出は要りません。
技能実習では、金額の決め方と説明まで決まっている
技能実習計画の認定申請では、「技能実習生の報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書」(参考様式第1-16号)を出します。その「徴収費用」の欄が、天引きの中身そのものです。記載例と注意書きから、費目ごとの決まりを抜き出すと次のとおりです。
弁当・食材なら買った額まで。社員食堂なら他の社員と同じ額まで。調理して出すなら、材料費・光熱費・人件費の合計÷食べる人数まで
借上げなら家賃(管理費・共益費を含む)÷入居人数まで。敷金・礼金・保証金・仲介手数料は含めない。自社物件なら建設費・耐用年数・人数から説明できる額
会社が実際に払った額÷使う人数まで(実習生以外も数に入れる)。本人が直接契約するなら取らない
定期に負担する費用を費目ごとに書き、本人が受ける便益と、額が合理的な理由を説明する(記載例はWi-Fi)
出典:外国人技能実習機構「参考様式第1-16号」記載例と注意書き。
つまり、協定を結べば何でも引けるわけではありません。協定は「引いてよい」という手続きで、いくらまで引けるかは実費で決まります。計画に書いた額と、実際に給与明細で引いている額はそろえておきます。
- 会社が本人の貯金を管理する労働契約に付けて貯蓄の契約をさせたり、貯蓄金を管理する契約をしたりすることは禁止されています(労働基準法第18条)。「帰国まで会社で積み立てておく」はこれに当たります。
- 帰国旅費を給与から引く技能実習の帰国旅費は本人に負担させられません。自己都合で帰るときも同じです(途中帰国の記事)。
- 計画と違う額を引く寮費を上げる、費目を足すときは、協定と説明の内容もあわせて直します。
貸したお金・スマホ代・住まいの費用は引ける?
現場でよく聞かれる6つです。本人名義で借りられないときは、監理団体が連帯保証人になるか家賃債務保証業者を確保して、本人名義で契約する道もあります(運用要領で優良な監理団体の取組として挙げられています)。どれも協定書にその費目が書いてあることが前提です。
本人からの申出で、額と回数が無理のない範囲。借用書を母国語で。「辞めたら残りを一括」「返し終わるまで帰国させない」はしない(労働基準法第16条・第17条)
スマホのときと同じ。働き続けることを条件にした貸付になると、給与との相殺は禁止です
「定期に負担する費用」として説明書(第1-16号)に書く。端末の分割代金と本人の回線の月額だけで、上乗せはしない。帰国・転籍のときに端末代が残っていたらどうするかを先に書面で決めておく
本人の自己負担で、基準を満たす物件に移ることはできます。家賃は本人が貸主に払います。宿泊施設が変わるので技能実習計画の軽微変更届出が要ります(説明書と見取り図を添付)
上限は「家賃÷入居人数」。1人なら家賃4万円で4万円、7万円で7万円まで。高額だと実費相当であることの追加説明を求められることがあり、本人の同意なく負担を増やすことはできません。軽微変更届出と、本人が署名した意思確認書が要ります
会社が用意する宿舎として借りたなら会社の負担(毎月の居住費に敷金・礼金を含めない)。会社の寮があるのに本人が別の部屋を希望し、名義だけ会社のときは、運用要領に「本人の自己負担で変更することは差し支えない」とあるものの、初期費用の扱いまでは書かれていません。立て替えて返してもらう前に機構の地方事務所へ確認を。敷金は退去時に契約した人(会社名義なら会社)に戻ります
出典:技能実習制度運用要領(居住費の算定、宿泊施設の変更、軽微変更届出の対象)、労働基準法第16条・第17条・第24条。
引くときの手順はどれも同じです。
- 協定書費目を書き足す(「会社貸付金の返済金」「会社名義で契約した携帯電話の利用料」など)
- 説明書定期に負担する費用なら第1-16号に書き、変えたら軽微変更届出
- 本人の同意母国語で説明し、署名をもらう(借用書・意思確認書)
- 明細と根拠明細は費目ごとに分けて書く。賃貸借契約書・請求書・借用書を保管
本人が自分で借りた部屋に、会社が家賃の一部を出すと
技能実習生が自分の意思で住居を選び、自分で貸主と契約していて、その住居が本人だけの個室(4.5㎡以上)などの条件を満たすときは、実習実施者が賃料の20%以上の住宅手当などの経済的な補助をしていれば、優良な実習実施者の要件の「住環境の向上に向けた取組」で加点の対象になります(優良要件の記事)。
2年目の6月から、手取りが下がる理由
住民税は、前の年の所得をもとに、その年の1月1日に住んでいる市区町村が課税します。来日した年は前年の日本での所得が無いので、1年目は通常かかりません。
2年目になると、1年目の所得に対する住民税が決まり、6月分の給与から翌年5月分までの12回に分けて給与から引きます(特別徴収)。総支給が同じでも、6月から手取りが下がります。金額は5月ごろ市区町村から届く特別徴収税額の通知書で確かめます。
社会保険料も、毎年9月分から標準報酬月額が見直されます(4〜6月の給与で決まる定時決定)。春に残業が多いと、9月から保険料が上がることがあります。帰国のときの住民税の一括徴収は 帰国手続き、年末調整は 年末調整・税金 にまとめています。
明細を本人が読めるようにする
「辞めたい」と言われたときの理由で多いのが、手取りが思ったより少ない、天引きの中身が分からないというお金の話です(「辞めたい」と言われたら)。多くは、明細の中身を説明できれば解けます。
- 来日前の説明と同じ言葉で書く明細の費目名を、説明書(第1-16号)と協定書の費目名とそろえます。「寮費」と「居住費」のように言い方が変わるだけで、別のものが引かれていると受け取られます。
- 初めての給与日に、明細を一緒に読む通訳を入れて、上の表のように1行ずつ。法令で引くものは「会社の取り分ではない」ことを伝えます。
- 変わる月の前に言う最低賃金の改定(10月ごろ)、社会保険料の見直し(9月分)、住民税の開始(2年目の6月分)。変わる前に一言あるだけで、不信感が生まれにくくなります。
補足
| この記事のもとになった決まり | 内容 |
|---|---|
| 労働基準法 第24条第1項 | 賃金の全額払い。法令に別段の定めがある場合と、過半数労働組合または過半数代表者との書面の協定がある場合に限り、一部を控除できる |
| 労働基準法 第16条・第17条 | 賠償予定の禁止。前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金の相殺の禁止 |
| 労働基準法 第18条第1項 | 労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、または貯蓄金を管理する契約をしてはならない |
| 参考様式第1-16号 | 技能実習生の報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書(技能実習計画の認定申請で提出) |
| 令和7年賃金構造基本統計調査 | 外国人労働者 第1表(在留資格×産業)・第2表(勤続年数別)・第3表(給与の分布)。技能実習の中位数185,300円・平均190,300円 |
- 相場は厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」外国人労働者の統計表(e-Stat)の第1表〜第3表と、結果の概況の第9表によります。
- 保険料率は協会けんぽ「令和8年度の保険料率」(山口支部の保険料額表)と厚生労働省「令和8年度 雇用保険料率のご案内」、所得税は国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」の月額表で計算しました(2026年9月確認)。
- 山口県の最低賃金は山口労働局「令和8年10月8日から山口県最低賃金が改正されます」によります。
- 徴収費用の決まりは外国人技能実習機構「参考様式第1-16号」(記載例)によります。
- 貸付・スマホ代・住まいの費用の扱いは、技能実習制度運用要領(令和8年4月)の居住費の算定、宿泊施設の変更、軽微変更届出の対象の表によります。貸付金と賃金の相殺については、使用者が行う金銭の融通が労働者を拘束する手段にならないことが明白な場合は前借金に当たらない場合がある、とされています(福井県労働委員会 Q&A)。
- 計算例の数字は説明用です。実際の保険料・税額は、会社の加入先、業種、本人の年齢・扶養・前年の所得で変わります。個別の計算は、社会保険労務士・税理士または所轄の窓口にご確認ください。
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